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FLASH7月23日・30日合併号掲載
『夫婦の絆』第16話の感想ご紹介です!
【まいこさん】
「夫婦の絆」第16話の感想です。
夫婦の絆とは何か、一郎の見解が示された第16話。
母が愛人と駆け落ちして父に育てられた一郎は、男女の気持ちの行き違いから夫婦が破綻してゆく様を目の当たりにしていたことが、過去の記憶を呼び覚ましてルサンチマンにする愚を避ける能力を身に付ける動機になったのでしょうか。
「いっちゃんは、なぜ私を妻にしてくれたの?」という問いに「いつの間にか始まっていた夫婦関係が快適だから」と応えるのは、「物事をそんなに深刻に考えない」「正直で軽い」と評した馬壁の言葉とも符合していて、集団リンチを受けたり、沙耶の身投げを阻止しようとしたりする咄嗟の行動も、無駄なルサンチマンに制約されていない、今この瞬間から始まる未来しか見ていない故とすれば、大いに納得できます。一郎の語る「夫婦の絆」における「永遠」とは、常に「こっから」。始まりも終りもない、今この瞬間、刹那ひとつひとつの連なりということなのかもしれません。
一方、「汚らわしい体」を手放した沙耶は、「邪悪な感情」に縛り付けられています。「蜜子と一郎の絆を守る」べく、メデューサのごとくの髪で覆い尽くしたマンションは牢獄となり、沙耶自身を閉じ込めているよう。男性から受けた非道に対するルサンチマンを動機として、数々のパワーを手に入れた沙耶の、他者の記憶の操作はできても自らの記憶を消せない哀しみが、精魂込められた筆致からひたひたと伝わります。
真黒無造が伴おうとしている“過去”は、「夫婦の絆」を壊すことになるのかどうか、ベランダにいた謎の女性は誰なのか、そして蜜子にとっての「夫婦の絆」とは何なのか…と様々に思い巡らせ耽読できる喜び、次回も楽しみです。
沙耶は身体を手放すことで「自由」になったつもりだったのでしょうが、亡霊には決して未来はなく、過去しかないのですね…
人が生きていく上で「現在」とは何か?「過去」とは?「未来」とは? そして「永遠」とは何なのか?
様々なことを思い、考え、そして次回が待ち遠しくなるばかりです!